東京高等裁判所 昭和60年(行コ)78号 判決
控訴人
社会福祉法人恩賜財団済生会
右代表者理事
堀内光
右訴訟代理人弁護士
成富安信
同
中町誠
同
中山慈夫
被控訴人
中央労働委員会
右代表者会長
石川吉右衞門
右指定代理人
萩澤清彦
同
渡部吉隆
同
梅田令二
同
竹下健一
同
伊藤千鶴子
被控訴人補助参加人
全済生会労働組合
右代表者中央執行委員長
口羽素臣
被控訴人補助参加人
全済生会労働組合中央病院支部
右代表者執行委員長
西村馨
右両名訴訟代理人弁護士
嶋田喜久雄
同
筒井信隆
同
筒井具子
右当事者間の不当労働行為再審査申立棄却命令取消請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
差戻前の控訴審及び上告審の訴訟費用中控訴人に関する分並びに差戻後の控訴審における訴訟費用は全部控訴人の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 控訴人
原判決を取り消す。
被控訴人が中労委昭和五二年(不再)第五八号不当労働行為救済命令再審査申立事件について昭和五三年三月一五日付けでした命令を取り消す。
訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
との判決
二 被控訴人及び同補助参加人ら
控訴棄却の判決
第二当事者双方の主張及び証拠関係
原判決事実摘示中の控訴人関係部分及び当審記録(差戻前)中の書証目録の記載と同一であるから、これを引用する。
理由
当裁判所も、控訴人の本件請求は理由がないと判断するが、その理由は、次のとおり付加、訂正するほかは原判決理由第二と同一であるから、これを引用する。
一 原判決二三枚目表五行目「しかしながら、」の次に「労働委員会の救済命令は、使用者の不当労働行為によって生じた状態を直接是正し、正常な労使関係を回復させるために必要な措置を命ずるものであって、法は、右是正措置の内容について特に規定を設けず、個々の事案に応じて適切妥当な措置が決定されることを期待し、その内容を労使関係について専門的知識経験を有する労働委員会の広範な裁量に委ねたものというべきであるから、労働委員会が発した救済命令は、その内容が社会観念上著しく妥当性を欠き、法が裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして、違法とならないというべきである。そして、」を加える。
二 原判決二三枚目裏八行目「命ずることは、」から同九行目「肯認しうるところであり、」までを「命じたとしても、右命令をもって、社会観念上著しく妥当性を欠き、法が裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認めることはできず、また、」と改める。
以上により、控訴人の本件請求は理由がないので、これを棄却すべきものであり、これと同旨の原判決は相当であって本件控訴は理由がない。
よって、本件控訴を棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法九五条、九六条、八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 森綱郎 裁判官 高橋正 裁判官 清水信之)